| SFCフォーラム・ファイル8 | ||
SFC(湘南藤沢キャンパス)は1990年に、慶應義塾の建学の理念である「独立自尊」、「実学」と「半学半教」を21世紀の新しい時代を先導する中で実現するために開設された。それから15年目を迎え、SFCは総合政策学部と環境情報学部の「双子の学部」と大学院政策・メディア研究科に看護医療学部を加え、キャンパス全体の研究展開を支えるSFC研究所も一体となって、研究・教育の両面で着実に成果をあげてきている。
文部科学省の「21世紀COE(世界的研究教育拠点の形成のための重点支援)」に2002年には「次世代メディアの知的基盤」プログラムが、2003年には「日本・アジアにおける総合政策学先導拠点形成」プログラムが採択され、同年には文部科学省の「COL(特色ある大学教育支援プログラム)」にSFCの「問題発見解決型教育」プログラムが慶應義塾大学を代表して採択された。
こうした成果をあげることができたのは、既存の学部が拠って立つ専門学問領域に縛られず、むしろ21世紀世界が直面する問題の発見と認識そしてその解決を最優先することで、社会を先導する研究の推進と人材の育成を目指したからであろう。そしてこうした営為に対する熱い共感と厚い支持をキャンパスの外からも得られてきたからであろう。
共感と支持の中核となったのが、SFCフォーラムである。SFCフォーラムはSFC開設直後に、SFCの活動を支援するために設立された。フォーラムはSFCの「問題発見・解決型」研究・教育の理念を共有する企業人を中心とした会員とSFCの教員や研究者とが新たな「知の再編」を目指して交流する「産学の対話」の場となっている。
昼食講演会、研究セミナー、経営サロン、SFCオープンリサーチ・フォーラムでのワークショップなど、SFCフォーラムが企画するさまざまな機会を通じて「産学の対話」が重ねられている。そして「対話」を通じて、豊かな発想と広い視野を共有するとともに、未来の課題を先取りし、課題解決に向けた取組みが「産学の連携」で進められてきた。亜未来の課題の設定とその解決の具体的な取組みに向けて、SFC研究者と会員企業との連携を促進するために、新たに「リサーチ・カウンセル」もはじまることになっている。
本書は、SFCフォーラムのこうした取組みの一部を紹介する第8弾である。SFCの教員・研究者とフォーラムの会員たちがフォーラムという「産学の対話」の場で、どのように21世紀の日本と世界の課題を設定し、どのような世界の再編を展望したうえで、「産学」連携の「民」による「未来先導への挑戦」を具体的に推進してきたのかが集約されている。
迷走しているな、と思う。やっと経済がよくなったといっても、まだ地方はかなり悲惨だし、政治も年金・イラク戦争・拉致問題の3点セットで騒いでも、なにをしたいのか、わからん状況だ。小学生がチャットでの書き込みにキレて、友達を殺すという事件も起こり、おいおい、どうなっているんだ日本、とつい愚痴ってしまう。
そんな混迷する社会事情のなかで、時代状況のリアリティを伝え、それに応える何かを提示しているのが、今回のファイル8である。SFCフォーラムも、その成果をファイルとしてまとめ、その成果を世の中に示すようになって、はやくも8年目を迎えようとしている。その間のインターネットをはじめとしたテクノロジーやメディアの進展の速さと、社会制度上の構造変革の遅れとのズレの大きさには、ため息をつくばかりであるが、このファイルだけは、そのズレを埋めようと必死になっている姿がみえて、頼もしくもあり、しかし同時に社会全体の変革の乏しさと変革への意思の薄弱さを思うと、物悲しくもある。
ややメタファー的表現だが、小さいことから社会を動かすしかない、という視点が今回のファイルをみた時の印象である。バイオが小さい世界の話だ、という対応づけはあまりにも間抜けだが、多くの話が、小さなところから変化させることへの可能性をアピールしている。ネットワークコミュニティでも、リエゾン精神看護も、そして反グローバリズムとしてのサバティスタ運動におけるゲリラにしても、多くの講演が、ネットワークというつながりのメディアをもって、小さな主体から変革することこそが今の世界に期待されるアプローチであり、SFCならばその方向で行くべきだ、という変革の思想が宣言されている。科学技術立国の復権にかけるバイオサイエンスの話も、アカデミック・ベンチャーへの期待が主張されており、小さなことのパワーに、新しい世界を創造するきっかけがある、という基調が鮮明である。
SFCが実験キャンパスとしてその社会的使命を果たすとき、そこではスモール・イズ・スマートが合言葉になるかなと、今回のファイル8を読んでみて、そう思う。60年代のヒッピームーブメントでは、ビューティフルという情緒的な言葉で時代への抵抗を表現したが、今SFCが考えるのは、孤立した美しさではない。ネットワーク化された人びとがP2Pのような形態でスマートに情報を共有して、クリエイティブコモンズを創出することが求められている。ケータイやデジカメの即物的な小ささ以上に、メタファーとしてのスモールなスマートさを読み取れば、やっと日本が得意な時代に突入するぞ、と思うはずである。それが今回のファイルのアピールである。しかし日本はそれに気づいてない。だからこそSFCは、声をだして、新しい未来への貢献を訴えなければならないのだ。
[訂正とお詫び] 「Section2〈民〉による戦略の構図」の内、「07 医療・看護 講演『身体も心も癒す医療−(リエゾン精神看護〉という挑戦』 より野末 聖香(看護医療学部教授)」での本書掲載サブタイトル と本講演内容とは無関係です。本講演内容では、掲載サブタイトル を想定させるような点には一切言及しておりません。 誤解を招く表現により、講演者はじめ関係者の方々にはご迷惑を おかけしたことをお詫び申し上げます。